気象集誌. 第2輯
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広域合成レーダーエコー天気図によってみられる梅雨前線帯の中間規模エコークラスター
その I
二宮 洸三秋山 孝子
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1972 年 50 巻 6 号 p. 558-569

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抄録

梅雨前線帯の大雨レーダー解析はすでに数多くなされているが,現在まだ梅雨前線の総観的エコーモデルは得られていない.それはケーススタデイの多くが,おもに大雨域の大雨期間においてのみ行われ,大雨にともなうエコー分布とその時間的変化を総合的に把握していなかったからである.
この報告では7箇所の気象レーダー(凌風丸•種子ケ島•背振山•広島•室戸•名古屋•富士山レーダー)のPPI観測により,九州西方海域,西および中部日本列島を包む,広域合成エコー分布図を,総観規模低気圧波動の一週期に相当する,1969年7月3日~6日の期間について作製し,これによって大雨をともなう梅前線のエコー分布とその時間的変化を記述する.
活発なエコーは梅雨前線帯に一様に分布しているものではなく,また総観規模低気圧の近傍に組織化されているものでもない.エコーは直径2~300km,間隔数100kmの中間規模エコークラスターに組織化されているのが大きな特徴である.クラスターは低気圧の後面にも存在するが,著しく発達するクラスター(複数)は低気圧東方に位置するものである.
直接大雨をもたらすメソスケールの豪雨セルは,これらのクラスター内に発生する.詳細な地上天気図の解析により,クラスター中心にisallobaric lowと低気圧性循環が見出される.上記の特徴はこのケースのみに見出される特殊なものではなく,他の実例としてかかげた.1968年7月10日および1969年7月7日の梅雨前線帯にも認められるものであった.したがって,ここに記述した中間規模エコークラスターの特徴は,一つの典型的な梅雨前線の特徴と考えたい.(梅雨前線の典型的なエコー分布としてはこれ以外にもいくつかのタイプがあるであろうが).
また広域合成エコー天気図によって,単一のレーダーのみでは充分に認識されえない梅雨前線上の現象がよりよく理解されることを強調したい.
本報告は気象研究所梅雨末期集中豪雨特別研究の一部としてなされたものである.

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