気象集誌. 第2輯
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大気•海洋間の長期平均フラックスの計算に微気象学的輸送係数の適用について
近藤 純正
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1972 年 50 巻 6 号 p. 570-576

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抄録

長期間平均の運動量,顕熱および蒸発の潜熱の輸送量は微気象観測から得られた輸送係数を用いるいわゆるバルク法の式だけで表現することができなくて,更に,風速のvariance,風速と海面•大気間の温度差または水蒸気圧差とのcovariance,および風速と温度差または水蒸気圧差でつくる3次相関の項も含まれる.
12ケ所に居る定点観測船の資料を解析した結果,次のことがわかった.1日程度以下の短かい平均時間の場合は,いわゆるバルク法の式だけでフラックスは近似的に与えられるが,数日以上の長い期間の平均値の場合は近似は相当悪くなる.
ところで,風速の変動成分の大きさは平均化時間の増加と共に単調に増加し,しかも各地点によってその形に顕著な差がないことから,運動量輸送量の長期平均値は有効輸送係数を用いるバルク法の式だけで近似的に与えられる.
有効輸送係数はもとの輸送係数の1.3倍(3ケ月平均の場合)または1.2倍(1週間平均の場合)程度である.それに対して,顕熱や潜熱の輸送量に関しては,一定の有効輸送係数を用いることができない.この事実は,熱収支の方法からもとめた有効輸送係数が,地域や期間によってばらついた結果を生むことを示す.今回の解析から,このばらつきは特別の場合を除き,多くの場合,±30%程度と見込まれる.

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© 社団法人 日本気象学会
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