気象集誌. 第2輯
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東支那海海上の熱収支状況の変動
二宮 洸三
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1973 年 51 巻 6 号 p. 435-449

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抄録
前報告(1972)においては,1968年2月における東支那海域の平均的総観気象状況と熱収支の状況を解析し,平均的な気団変質の様相を記述した.本報告は前報告を補足するものであって,この海域の総観気象状況の変動とそれにともなう熱収支状況の変動を記述することを目的とする.得られた結果は次のように要約される.
この海域では,約4日の周期で通過する波動性低気圧が卓越するが,その通過にともなって,下部対流圏の成層状態および熱収支の状況は著しく変動する.それらの状況は大別すれば,2つの状況つまり低気圧通過後の寒気吹出の状況,および低気圧の中心近傍にみられる亜熱帯気団の侵入の状況に要約される.
前者の状況下ではこの海域全域に発達した安定層が下部対流圏に存在し,孤立したエコーが散在する.この状況下では海面からの熱エネルギーの補給量は大きいが,大きな気温と混合比のindividual change(正の値の)は下層のみにみられ,気団変質は安定層以上の上部にはおよぼない.
後者の状況下では,南西諸島域への亜熱帯気団の侵入にともなう,速度場の収束と,水蒸気流束の収束が下層で著しく,大きな正および負の気温および混合比のindividual changeが中層にあらわれる.東支那海南部では安定層は存在せず,厚い湿潤中立層が形成され,積雲活動がさかんであり,熱エネルギーの対流輸送による再配分は対流圏中層におよんでいる.
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© 社団法人 日本気象学会
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