日本における1961-67年の月別乳児(1歳未満)死亡数,月別幼児(1歳以上5歳未満)死亡数を Becker の図表を描いて適当な補正を行ない,月別乳幼児死亡率(出生千対年換算死亡数)を算出した.これを1つの時系列とみなし,乳児(1歳未満),1-2歳未満,2-3歳未満,3-4歳未満,4-5歳未満の幼児の5グループ毎に,アメリカセンサス局法II,X-11で解析し,それぞれ各年齢層に特有の季節パターンを得た.
その結果,乳児死亡の季節パターンは1)冬季の死亡率が著しく高い,2)季節変動の幅が徐々に縮小している,3)夏季に小さな山が出現しはじめたことなどが判明した.また幼児死亡の季節パターンについては,1)1-2歳未満では冬から夏にかけて死亡率が高く,2)2-5歳未満では冬の死亡率が低いことがわかった.
さらに幼児期の死因第1位である不慮の事故(主に溺死)による死亡数を除去した後,再び死亡率を計算し,X-11により解析し5グループに対する修正季節パターンを得た.
これらをみると乳児死亡の季節パターンは修正前と修正後では大差がない.しかし1-2歳未満では様相が一変して,不慮の事故を除去すると,高い冬山とやや盛り上った夏山をもつ季節パターンを呈する.これは季節変動のパターンおよび幅からみても乳児期における季節パターンとほぼ同一とみて差し支えない.2歳以上5歳未満では多少特徴的な季節パターンを呈するものの,その変動幅はずっと縮小し,周期の短かい上下振動が多くみられるようになる.以上のことから2歳以下の乳幼児は,未だ冬,夏両季節の影響を強く受けるが,2歳以上の幼児は寒さ,暑さの季節的影響をかなり克服し得るようになったものと推論される.
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