気象集誌. 第2輯
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放射伝達に及ぼす火星大気中のダストの効果(その3)
ダストによる放射効果を入れた火星大気の輻射対流平衡に関する数値実験
森山 茂
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1976 年 54 巻 1 号 p. 52-58

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抄録
大気の熱的構造の決定に寄与すると思われる,すべての放射効果,即ち,ダストによる太陽光吸収加熱と赤外放射冷却,CO2-15μ帯による赤外放射冷却,を考慮して,ある特定の太陽高度に対する火星大気の輻射対流平衡を求めた。ダストは火星大気の熱的な構造を決定するのに非常に重要な役割を演じている。その結果は次のとおりである。
1)火星大気の熱的構造は非常に安定な様相を呈している。そして,dust-freeの場合より上層で高温になる。
2)ダストの多い場合には,下層からの対流によって熱が輸送されるというよりも,むしろ,火星大気は直接,ダストによる太陽光の吸収で暖められている。
3)対流圏の中•上層での温度の日変化は,dust-freeの場合より非常に大きいであろうと考えられる。
4)太陽放射に対する光学的距離が長くなると,強く大きな逆転層が日中でさえ,かなりの上層に出現する。
5)太陽高度が高いと,dust-freeの場合より,表面への太陽光の減衰によって,地表面温度は低くなろう。一方,夜間や,非常に太陽高度が低い時には,表面温度はダストによる温室効果で高くなろう。
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© 社団法人 日本気象学会
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