抄録
用いたデータは1日2回,8層の風,気温,および高度場で,期間は1978-79(FGGE)の冬3ケ月である。下部対流圏では風はヒマラヤをこえるよりも廻る傾向が強い。ヒマラヤの北(45°N)と南(25°N)に分かれていた分流は下流の中国上空で一つの強いジェットとなる。ヒマラヤの東端にそって北側で高気圧性,南側で低気圧性の渦が存在する。さらに500mbの風はヒマラヤの上できわめて弱くなっている。これらの特徴はヒマラヤによる摩擦の影響を表わしている。
200mbではジェットの中心はチベット高原の南に移り,東に向って急激に加速している。この強い東方加速は非地衡風的,南風成分による。上層の南風成分は,暖かい南の海洋(降水)と北の冷たい大陸(輻射冷却)による直接循環を表わす,
チベット高原東側では直接循環が卓越するのに反し,西側では間接循環がみられる。その上昇域はソビエト南部(降雪とヒマラヤによる強制上昇),下降域はアフガニスタン,パキスタン(乾燥)に存在する。チベット高原の北側(40°-45°N)には,ソビエト南部における上昇域,中国北部における下降域(山による強制下降)をもつ東西循環が存在する。