気象集誌. 第2輯
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若干の解析解による有限振幅傾圧波の研究のレビュー(安定度と傾圧性の変化の効果をとり入れる新しい計算方法を含む)
Barry SaltzmanChung-Muh Tang
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1982 年 60 巻 1 号 p. 1-15

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抄録
二次の非線形過程および非地衡風過程が2層の増幅傾圧波の時間発展に及ぼす効果を調べた著者らの一連の研究をレビューする。大気,海洋中の傾圧波に見られる有限振幅効果による特性(高*低気の形態,前線の位置や形など)の多くは理論から導かれ得ることを示す。しかしながら,上記の研究においては基本状態の変化と低次(一次)の波動場の間のフィードバックが省略されており,そのため波動は飽和振幅に達する(つまり閉塞する)ことなく,不自然にどこまでも発達する。鉛直安定度および傾圧性(鉛直シアー)の変化と発達する傾圧波の間の相互のフィードバックによる飽和の効果を示すため,新しい半数値的計算方法を開発した。この方法はこれまでの解析解による研究と結びつけることができる。初期の基本状態が典型的で,かつ異なる波数の間の相互作用や摩擦がない場合には,閉塞状態になるのに要する時間スケールは大気で10日ほど,海洋で2か月であることがわかる。いずれの場合も波の飽和をもたらすには傾圧性の変化の方が鉛直安定度の変化の効果よりも重要である。摩擦が省略されているので,閉塞した傾圧波の最終的衰弱はこの理論では表現されない。
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