気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
条件付不安定大気中における積雲対流の卓越モードに関する研究補遺
浅井 冨雄中筋 勲
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 60 巻 1 号 p. 425-431

詳細
抄録

数値実験に基づき,条件付不安定大気中で発現する積雲対流の卓越モードの力学的性質について得られた結果が示される。前論文(浅井•中筋,1977)で用いられた上昇域は常に水蒸気で飽和,下降域は未飽和という仮定がとり除かれ,水蒸気を陽に取り扱うモデルに修正された。前論文と同様,最初,温位にランダムな微小振幅の擾乱を与え,最終的に残る準定常的な対流セルを積雲対流卓越モードとした。このようにして得られた積雲対流の卓越モードは対流セルの水平規模(あるいはaspect ratio,即ち水平規模/鉛直規模)と上昇流域の全域に対して占める割合(あるいは雲量)によって表わされる。これら卓越モードが平均場の状態にいかに依存するかを調べ大略,前論文の結果を確認することができた。平均上昇流が増すにつれ,卓越モードの水平規模は小さくなり,雲量は大きくなる。一方平均下降流が強まると急速に水平規模は大きく,雲量は小さくなり,やがて消滅する。相対湿度に対する卓越モードの応答は平均上昇流域では鈍感,平均下降流域では敏感である。また,積雲対流の卓越モードは位置エネルギーを最低にするものとして実現していることも示される。

著者関連情報
© 社団法人 日本気象学会
前の記事 次の記事
feedback
Top