気象集誌. 第2輯
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北極圏カナダにおける冬季の雲と降水の観測(POLEX-North)
第一部雲と降水の一般的な特徴
武田 喬男藤吉 康志菊地 勝弘
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1982 年 60 巻 6 号 p. 1203-1214

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抄録

1979年11月から1980年1月にかけて,カナダ•ノースウェスト準州•イヌーヴィクにおいて雲と降水の観測を行った。主に高層気象観測およびレーダー観測の資料を用いて解析した結果,雲と降水の特徴について次の結論を得た。観測期間中3つのタイプの雲がしばしば観測された-タイプIの雲:雲層内の温度減率がほぼ湿潤断熱減率に近い,タイプIIの雲:雲層内で温度が高度と共に殆んど変らない,タイプIIIの雲:雲層内で温度が高度と共に増す。warm periodでは,タイプIとタイプIIIの雲が観測されることが多く,両者はしばしば2層の雲として存在していた。cold periodでは,タイプIIの雲が観測されることが多かった。このタイプの雲は,タイプIあるいはIIIの雲に比べてより持続性があり,また,より厚い傾向にあった。タイプIIの雲は,地上の目視観測でははっきり認められないにもかかわらず,波長8.6mmの垂直レーダーではよく検知された。雲は,数濃度は小さいが,大きい氷粒子により構成されていたと推測される。タイプIの雲のレーダーエコーは対流性の特徴を示していたが,タイプIIIの雲はレーダーにより殆んど検知されなかった。タイプIIの雲からの降水は,強度は弱いが,観測期間中の降水時間の約30%を占め,全降水量の約20%を占めていた。

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