1982 年 60 巻 6 号 p. 1215-1226
北極域観測計画(POLEX-North)のサブプログラムの一つとして,「冬季の雲と降水の観測」が1979年12月1日から1980年1月5日までの間,カナダ•ノースウエスト準州イヌヴィック(68°22'N,133°42'W)で行われた。北太平洋からの温暖な気団による降雪は,樹枝状結晶が主で,時として雲粒付や雪片を形成し,霰を降らすこともあり,波長 3.2cmのPPIレーダエコーは対流性であった。一方,寒冷な北極気団による降雪は砲弾や角柱状結晶,それに交差角板結晶の場合が多く,レーダエコーは層状性であった。観測期間中の一連の降雪の最大降水強度は 10-3~1×100mm•hr-1で,これを使って降雪粒子の粒子数フラックスから質量を求めると,1×10-3~1×10-2mgであり,これらの質量に相当する相当直径は,0.12mm~0.27mmであった。また,交差角板と角柱結晶に対するレーダ反射強度 (Z) と降水強度 (R) との関係は,それぞれZ=13R1.2, Z=9R1.1となり,先に南極点基地の夏季の氷晶粒子に対して得られたZ=10R1.0にほぼ等しかった。一連の降雪に対して,降雪粒子の最大直径と粒子数フラックスの間には,雲層が厚い時には粒子数フラックスが増加しても最大直径が増加する傾向が認められたが,雲層が非常に薄い時には粒子数フラックスが増加すると,逆に最大直径が減少し,また最大直径が増加すると,粒子数フラックスが減少するという傾向が認められた。これらの性質を考慮して,雲厚,雲内の最高最低温度,雲の構造と降雪粒子の結晶形との関係がFig.15のように括められた。