抄録
シベリア,北東アジア,中国および日本海の4地域での運動エネルギー特性を2冬期について調べた。冬期の平均状態では,地上に高気圧,上層で高気圧性流れとなることがよくあるシベリア域の特徴は,運動エネルギーの位置エネルギーへの変換による消失と,負の消散である。地上に低気圧,上層で低気圧性流れであることがよくある北東アジア域と日本海域では,運動エネルギーの生成と消散がみられる。中国および日本海域とその周辺海域では,変換量が大きく,冬期北半球で最もエネルギー的に活発な地域である。
流れのパターンと運動エネルギー収支の特徴との関係を調べると,シベリア域を除き,低気圧性の流れの場合に運動エネルギーの生成,流出および消散となる。中国域と日本海域で低気圧性の流れが卓越しているとしても,ここで扱った他の領域あるいは北米での平均の低気圧性の流れの場合に比べて,極めて強いエネルギー変換が起っている。