抄録
成層圏乱流層の厚さ(厳密には,崩壊高度と臨界高度の距離)が内部重力波の崩壊のmarginalstateを記述する方程式にもとづいて数値的に求められた。その結果によると,メソスケール内部重力波の崩壊によって発生する乱流層の厚さはほぼ300mあるいはそれ以下の場合が多く,これは下部成層圏で頻繁に観測されるものとよく一致する。乱流層の発生は粘性とニュートン冷却によって抑制されるが,その度合は水平波長と存在高度に依存する。一般に,長波長の波動の方が短波長の波動よりもその抑制が効果的である。さらによく検討してみると,ニュートン冷却による抑制が特に長波長の波動に効果的であることがわかる。下部成層圏における各乱流層内の最大渦粘性係数についても,乱流層の厚さ及び分子粘性による特徴的な厚さの2つの値を与えることによって求められた。
乱流層の厚さと波動の振幅は,中層大気底部での内部重力波の重要な情報を与える。そしてそれらの内部重力波は上方に伝播し,乱流に崩壊してメソポーズ近辺の大気大循環を変化させる。