気象集誌. 第2輯
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放射霧の生成•消滅過程の数値実験
太田 幸雄田中 正之
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1986 年 64 巻 1 号 p. 65-77

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抄録
放射霧の生成•消滅過程について,一次元の大気境界層モデルを用いて数値実験を行った。地表面に付着した露及び地表面に落下した霧水はすべて地表面に貯えられるものと仮定し,地中内部と地表面との間の水分の輸送は無視した。この大気境界層モデルにおける放射効果を算定するために,霧層内の放射伝達方程式の解法としてP3近似法を用いた。
放射霧の発生とともに,霧の上端部では放射冷却率が急激に大きくなり,気温が急激に低下して水蒸気の凝結が促進される。このため霧はその濃度を増しながら上方に向かって成長して行く。地表面への下向き放射量が霧層からの放射によって急激に増加するため,地表面温度が上昇し,霧層内の温度分布が安定から不安定へと移行する。霧層内の不安定度が増すに従って拡散係数は急激に大きくなる。このため,地表面から霧層への水蒸気の輸送が促進され,霧はますます成長を続ける。霧層内部の温度分布が不安定状態となるのに対し,霧層の上の大気の温度分布は相変らず安定であるため,霧の上端部付近で鋭い気温逆転が生じる。この気温逆転の位置は,霧の上端の上昇に伴って時間とともに上昇して行く。地表面に貯えられていた水分量が無くなり地表面から霧層への水蒸気の補給が断たれると,地表面温度はより一層急激に上昇し,霧は地表面近くの下層から消散し始める。
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© 社団法人 日本気象学会
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