気象集誌. 第2輯
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1986年のアジア夏期モンスーンのオンセットにおける西太平洋の赤道熱源の役割について
隈 健一
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1988 年 66 巻 3 号 p. 399-417

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抄録

赤道付近の熱源とアジアモンスーンのオンセットとの関係について研究した.
Heら(1987)は,東南アジアモンスーン及びインドモンスーンのオンセットにともなう2回の遷移が南アジアの上層高気圧の動きで特徴づけられることを示した.本論文の目的は何がこの上層高気圧のふるまいを決めているかを調べることである.
Gill(1980)は,南アジアの上層高気圧を含めたモンスーン循環が,赤道領域の熱源に対するロスビー型の応答であることを,線型定常浅水波方程式で示した.赤道熱源の強まりは,ロスビーモードを誘起し,南アジアの上層高気圧を強めることができる.
1986年の夏のはじまりには,1979年と同様に40日周期の東進モードがはっきりとみられる.このモードにより,西太平洋と海洋大陸上の湿潤対流もその強さを周期的に変化させる.この湿潤対流が活発化すると,南アジアの上層高気圧も急速に強まる.1986年の上層高気圧のふるまいは,1979年のそれに,非常に似ている
赤道付近の熱源とこの上層高気圧との関係を確めるために,予報実験をおこなった.ここでは,1986年の2回の遷移期について非線型のフルモデルを用いて,赤道付近の熱源をコントロールした.熱源は30°Nと30°S,90°Eと170°Wの領域内で,日本の静止気象衛星GMSで観測された雲頂温度から推定した。この実験により,南アジアでの200mbの高気圧を作るのに,モンスーン領域から離れた赤道領域の熱源が重要であることが認められる.

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