気象集誌. 第2輯
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66 巻, 3 号
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  • 隈 健一
    1988 年 66 巻 3 号 p. 399-417
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    赤道付近の熱源とアジアモンスーンのオンセットとの関係について研究した.
    Heら(1987)は,東南アジアモンスーン及びインドモンスーンのオンセットにともなう2回の遷移が南アジアの上層高気圧の動きで特徴づけられることを示した.本論文の目的は何がこの上層高気圧のふるまいを決めているかを調べることである.
    Gill(1980)は,南アジアの上層高気圧を含めたモンスーン循環が,赤道領域の熱源に対するロスビー型の応答であることを,線型定常浅水波方程式で示した.赤道熱源の強まりは,ロスビーモードを誘起し,南アジアの上層高気圧を強めることができる.
    1986年の夏のはじまりには,1979年と同様に40日周期の東進モードがはっきりとみられる.このモードにより,西太平洋と海洋大陸上の湿潤対流もその強さを周期的に変化させる.この湿潤対流が活発化すると,南アジアの上層高気圧も急速に強まる.1986年の上層高気圧のふるまいは,1979年のそれに,非常に似ている
    赤道付近の熱源とこの上層高気圧との関係を確めるために,予報実験をおこなった.ここでは,1986年の2回の遷移期について非線型のフルモデルを用いて,赤道付近の熱源をコントロールした.熱源は30°Nと30°S,90°Eと170°Wの領域内で,日本の静止気象衛星GMSで観測された雲頂温度から推定した。この実験により,南アジアでの200mbの高気圧を作るのに,モンスーン領域から離れた赤道領域の熱源が重要であることが認められる.
  • 岩崎 友彦, 廣田 勇
    1988 年 66 巻 3 号 p. 419-432
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    北半球対流圏における大気大循環の年々変動と南方振動指数(SOI)との関連を調べた。用いた資料は,アメリカ気象局(NMC)で毎日解析されている北半球ジオポテンシャル高度場で,期間は1963年~1982年の20年間である。
    SOIに基づく循環場の差異は,晩冬期(1月~3月)に顕著である。晩冬期では,帯状平均風とSOIとが高い相関を持っている。SOIが負に極端(L/W)な年と正に極端(H/D)な年とで帯状平均風の差をとると,40°N付近に節を持つバロトロピックな構造が見られる。これは, L/W(H/D)年の強い(弱い)対流圏ジェットと弱い(強い)中緯度西風帯との対比による。
    晩冬期における帯状平均風に伴うプラネタリー波の活動性の違いについて,準地衡風E-Pフラックスとその収火•発散を用いて調べた。L/W年では,中緯度でE-Pフラックスの収束が人きく,これには,E-Pフラックスの鉛直成分(水平方向の渦熱輸送に比例)からの寄与が大きいことがわかった。一方,H/D年では,対流圏ジェット付近の収束が大きく,これはE-Pフラックスの水平成分(水平方向の運動量輸送に比例)の微分の傾向と符合している。これらのプラネタリー波の振舞いは,両カテゴリー(L/W,H/D)における帯状平均風の強弱に対応している。
    晩冬期の平均500mb高度場にも,両カテゴリーに対応して二つの典型的な循環パターンがみられる。L/W年では,西太平洋と西大西洋とにトラフを持つ波数2型となり,H/D年では,さらに黒海付近にもトラフが出現し波数3型となる。また特にH/D年では,西太平洋からアリューシャンを経由し北米にかけての波列,及びグリーンランド南から北海•カスピ海を経由しインド北西にかけての波列,また北大西洋振動も明瞭である。以上の結果をもとにSOIの変動に伴う熱帯域の異常によるロスビー波の頻繁な励起という視点から,北半球中緯度大気循環における特徴的波数型の成因を考察した。
  • 岩坂 直人, 花輪 公雄, 鳥羽 良明
    1988 年 66 巻 3 号 p. 433-443
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    大規模スケールの表面水温アノマリ変動の特徴を理解するために,表面水温アノマリの時間変動の類似性に着目してのクラスター解析を,北太平洋の表面水温アノマリ場に対して行った。この解析によって,表面水温アノマリがコヒーレソトに変動する海域として北太平洋の中緯度西部海域がひとまわりの海域(REGION A)として抽出できた。この海域は,北太平洋表面水温アノマリ場の主成分解析では表現できなかったものである。さらに,北太平洋は,四つの主な海域に分けることが出来る。すなわち,北西海域(REGION A),西部熱帯海域(REGION B),北太平洋中央海域(REGION C),東部境界海域(REGION D)である。これらの海域を特徴づける海洋および大気の条件についても議論する。
  • 花輪 公雄, 渡邊 朝生, 岩坂 直人, 須賀 利雄, 鳥羽 良明
    1988 年 66 巻 3 号 p. 445-456
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    ENSOイベント期間中の西部北太平洋における表層水温場の状態を明らかにするため,海面水温アノマリと,東経137度線および伊豆海嶺上の測線(J線)における黒潮領域の混合層に対する合成図解析を行った。1961年から1985年までの25年間の冬季を,ENSO-1年,ENSO年,ENSO+1年,他の年の四つのカテゴリに分類した。たとえば,1982/83年ENSOイベントでは,1983年1~3月がENSO年冬季とみなされる。解析の結果,ENSO年冬季の海面水温場には,アジア大陸から東経170度付近までの北緯30度線に沿った幅広い領域で,顕著な正のアノマリが出現することがわかった。一方,ENSO+1年冬季の海面水温場は,符号が逆のENSO年冬季の分布と極めてよく一致しているアノマリ分布を示していた。また,ENSO年冬季の日本南方の黒潮領域は,他のカテゴリの冬季に比べ温かく薄い混合層であった。この差異を生じさせる原因のひとつとして,東アジアの冬季季節風の吹き出しの強さを挙げることができた。すなわち,ENSO年冬季の季節風の吹き出しは,他のカテゴリの冬季に比べて相対的に弱い状態となっていた。
  • 甲斐 憲次, 岡田 芳隆, 内野 修, 田端 功, 中村 一, 高杉 年且, 二階堂 義信
    1988 年 66 巻 3 号 p. 457-472
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1986年3月上旬,アジア大陸の砂漠と黄十地帯でまとまった砂塵嵐が発生した。2,3日後,砂塵を含んだ空気塊は,偏西風に乗って,黄海を越え,日本に達した。3月12,13日,日本の各地で黄砂現象が観測された。筑波において13日15時より21時まで,黄砂のライダー観測を行った。本論文では,まず,黄砂層の鉛直構造とその時間変化を述べる。
    15時,二つの黄砂層が高さ4kmと高さ2kmに観測された。上層は厚さ約1kmで,散乱比は3.2であった。下層はバックグランドエーロゾルと混じり合っていたかも知れない。その後,高さ4kmの黄砂層は発達し,厚さは1.5km,散乱比は5.7に増加した。18時,黄砂層は高さ4.5kmと3.5kmを中心とする二つのサブ層に分かれる。二つのサブ層を含む厚さは,2.2kmであった。ライダー観測値より導いた光学的厚さは,0.086(波長694.3nm)であった。18時から20時にかけて,黄砂層は0.5km低下した。20時,黄砂層はさらに分裂し,4.0km,3.2kmおよび2.7kmを中心とする三つのサブ層に分かれた。ラジオゾンデ観測と比較すると,上下のサブ層は湿度が低く,中層は湿度が高かった。
    次に,黄砂の長距離輸送を調べるために,数値シミュレーションを行った。シミュレートされたトレーサーの水平分布と鉛直分布は,筑波におけるライダー観測および日本•中国におけるルーチン観測とよく一致した。特に,観測された黄砂の2層構造は,よく再現された。この二つの層は,トレーサーの放出高度の違いによることがわかった。数値シミュレーションにより,黄砂の発生地として黄土高原およびその周辺の砂漠が重要であることがわかった。また,タクラマカン砂漠の可能性は否定できない。黄砂が黄土高原から日本に達するのに要する時間は2-3日,またタクラマカン砂漠からは5-6日を要する。
  • 遊馬 芳雄, 菊地 勝弘, 谷口 恭, 藤井 智史
    1988 年 66 巻 3 号 p. 473-488
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    降雪時の下層大気での大気電位傾度と降水電荷の鉛直構造を調べるために,係留索上に数点の観測点をつけた係留気球観測を行った。また,地上と高さ22mのビルの屋上で同時に観測したデータの解析も行った。得られた主な結果は次のようなものである。
    (i)電位傾度と降水電荷の間に存在する鏡像関係は地上付近では常に観測されるが,100m,200m上空では必ずしも観測されない。
    (ii)降雪粒子の電荷は上空で小さく,地表で大きい。このことは,降雪粒子が地表付近で急速に帯電していることを示している。
    (iii)雲底の高さが低くて,係留気球の最も高い観測点が雲内あるいは雲底近くにある時,最も高い観測点では,降雪粒子の帯電は弱く,また正に帯電していた。そして,電位傾度の符号との間には直接相関関係がなかった。一方,地上付近では,降雪粒子は負に帯電していて,電位傾度は正の値であった。したがって,降雪粒子は落ド中に負の電荷を得,鏡像関係が地表付近で成立している様子が観測された。
    (iv)地上での電位傾度はコロナ放電によって放出されたイオンによって影響を受けていることが観測された。
    (v)雲底下でもっとも有力な帯電メカニズムはWilsonの選択的イオン捕捉説と考えられる。大気電気要素の振舞いは,遊馬•菊地(1987)によって報告された数値実験とよい一致がみられた。
  • 木村 富士男, 吉川 友章
    1988 年 66 巻 3 号 p. 489-495
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    In April 1986, large amount of radioactive pollutant was emitted into the atmosphere by the nuclear accident at Chernobyl, and dispersed around the world. Numerical simulation of the global scale dispersion of the radioactive pollutant was carried out by using the operational meteorological model of the Japan Meteorological Agency. Calculated concentrations in many places over the world agree well with those observed. The numerical model showed that the radioactivity reached Japan about seven days after the accident with the maximum concentration of about 10pCi/m3, in agreement with observations.
  • 雲の2層構造による降水量の増幅
    岩波 越, 菊地 勝弘, 谷口 恭
    1988 年 66 巻 3 号 p. 497-504
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 光田 寧, 末延 龍雄, 藤井 健
    1988 年 66 巻 3 号 p. 505-508
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • O.S.R.U. Bhanu Kumar
    1988 年 66 巻 3 号 p. 509-514
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    The aim of this paper is to investigate the interaction between the Eurasian winter snow cover extent and the location of the April 500hPa ridge along 75°E for the period 1967 to 1986. Snow cover area and mean April ridge position data were from the NOAA/NESDIS Northern Hemisphere snow cover and ice charts and the normal upper-air charts of the India Meteorological Department (IMD) respectively. The relationship between the winter snow cover extent and the ridge location is negative (correlation coefficient =-0.63) and is significant above the 5% level. This preliminary result indicated that an extensive winter snow cover area was likely to maintain the April ridge position South of its 20-year mean location. An inverse relationship is more strong and significant (r=0.68) between the January snow cover and the April ridge at 500hPa position than the winter snow cover and the ridge. The regression equation between the January snow cover (S, in area) and the ridge location (R, in degrees) for the study period is R=33.68-0.65S. This relationship explains about 47% of the total variance. Finally, this interaction study suggested a considerable lingering effect of snow cover on the regional atmospheric circulation over India.
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