抄録
東アジアにおける8月下旬から11月はじめにかけての前線帯に伴う大規模場の特徴と推移,およびインドの夏季モンスーンの撤退との関連性を,1983年を中心に1981年から1985年について,主に半旬平均資料を用いて解析した。
中国大陸から口本列島にかけて準定常的に存在する前線帯の位置および停滞性と大規模場の特徴により,対象とした期間は以下の四つのステージに分けられた。
ステージ1では,前線帯は北日本以北にあり,前線の出現頻度も低い。日本列島の南方海上には亜熱帯高気圧の中心があって,日本列島南部にはりだしており,盛夏のつづきとみなした。
ステージ2では,前線帯は日本の南岸に移り,梅雨前線帯ほど顕著ではないが停滞する。ユーラシア大陸上の偏西風は大きく蛇行し,ブロッキングを形成し,北緯60度では準定常的なトラフが,年により位置はちがうが東経160度から西経160度の間に形成される。この時期までの前線帯は,中国大陸上で気温の水平傾度が小さく,水蒸気傾度が大きい。一方,日本付近では気温傾度が若干大きい。この特徴は,梅雨前線帯ときわめてよく類似しており,秋りん前線帯(秋雨前線帯)とみなすことができる。このステージは秋りん季とみなされ,その期間は5年間の平均で9月6日から26日であった。秋りん季の開始は,インドの北西部からの南西モンスーンの撤退の開始とほぼ同時であった。
ステージ3では,前線帯の位置はステージ2とあまり変わらないが,前線はあまり停滞しない。ユーラシア大陸上の偏西風の流れのパターンは,ステージ3の開始とともに急にゾーナルパターンに変わり,東経100度から150度付近に準定常的なトラフが形成される。また中国大陸上の前線帯では,気温傾度が大きくなる。このステージは,5年間の平均で9月27日から10月21日ごろにあたり,秋季の前期とみなした。
ステージ4になると,前線帯は中国大陸以南に南下し,日本列島からも遠ざかる。同時にチベット高原東部の亜熱帯ジェット気流は,チベット高原の南縁に南下し,南インドでは北東モンスーン季にはいる。ユーラシア大陸上の偏西風の状態は,ステージ3と比較的類似しており,秋季の後期とみなした。