気象集誌. 第2輯
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日本海上で観測されたスコールライン状対流性降雪雲
榊原 均石原 正仁柳沢 善次
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1988 年 66 巻 6 号 p. 937-953

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抄録

冬季日本海上で発達し,走向にほぼ直角に進んだ二本の対流性線状降雪雲の内部構造を,おもに1台のドップラーレーダーの観測データを用いて記述する。
これらの線状降雪雲は寒気吹き出し初期に,相対的に暖かい海面上に形成された厚さ4km以上の対流混合層内に発生した。線状降雪雲は走向に直交する垂直面内にエコーセルを2~3個含むマルチセル型であった。各エコーセルは線状降雪雲の進行方向前面の上空で発達し,中央部で成熟期に達した。古いエコーセルの上部は線状降雪雲の後部の安定層の下にあるかなとこ状の反射強度の弱い領域に残った。上昇流は線状降雪雲の進行方向前面にあった。上昇流はシアーに抗して傾き,また上方の安定層に貰入していた。線状降雪雲の後部のかなとこ状領域の下部には線状降雪雲に相対的に後方から前方に向いつつ下降する流れがあった。この下降流の領域では降雪粒子が蒸発していた。下降流の先端は地上では突風と約1°Cの気温低下をともなうガストフロントとして観測された。この線状降雪雲の循環と維持機構は,熱帯および中緯度のスコールラインに似ていた。

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© 社団法人 日本気象学会
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