気象集誌. 第2輯
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熱帯太平洋上の対流と結合した3-5日周期擾乱について
高藪 縁新田 勍
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1993 年 71 巻 2 号 p. 221-246

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抄録

太平洋赤道域の積雲対流活動の3-5日周期変動と結合した西進する擾乱システムの構造について、GMS赤外黒体輻射温度(TBB)データおよびECMWF全球客観解析データを用いて解析した。解析期間は1984を除く1980-89年9年間の6月-8月である。解析方法としてはスペクトル解析、ラグ相関解析およびコンポジット解析を用いた。
北半球夏期の太平洋ITCZ域において対流活動の3-5日変動成分が卓越することを統計的に示した。9年平均では、この変動は日付変更線付近の中部太平洋では混合ロスビー重力波(MRG波)型擾乱と結合し、西太平洋では熱帯低気圧(TD)型擾乱と結合している。このような卓越擾乱の変化は、平均東西風、鉛直シア、SST分布等の環境変化によって影響を受けていることが示唆される。これは、エルニーニョ年とラニーニャ年とにおける擾乱構造を比較することにより確認された。
各々の対流活動を伴った擾乱について3次元構造と特性値を求めた。MRG波型擾乱は等価深度約30mの線形MRG波に近い特性を示す。顕著な波の振幅が観測される領域は東西に約4000km(約半波長)に限られ、対流と擾乱とは結合・分離を繰り返す緩い結合関係にある。鉛直位相構造は柳井等(1968)の結果と一致し、林(1970)の示した構造に近いが、顕著なwave-CISkとは解釈できない。一方、TD型擾乱はReed and Recker(1971)等の示したような太平洋上の古典的な「偏東風波動」に対応し、対流とより密接に結合した構造を持つ。そして、その特性値は線形波動には対応しない。どちらの擾乱も有効位置エネルギーからのエネルギー変換によって運動エネルギーを獲得していることが明らかになった。

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