気象集誌. 第2輯
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組織化した対流性ストームの形成過程に関する数値的研究
第1部・長寿命セルの形成パターン
三隅 良平Marjan Divjak棚橋 修一武田 喬男
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1994 年 72 巻 2 号 p. 235-253

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抄録
長寿命の降水性対流セルの形成過程を調べる目的で、積乱雲群の3次元数値シミュレーションを行った。初期条件として、水平方向に一様な大気場に、小さいサーマルをランダムに与えた。
形成した対流セルは、次の3つの型に分類された。第1の型(Sタイプ)のセルは短寿命で、鉛直シアーの風下に傾いた上昇流を持つ。第2の型(Fタイプ)はSタイプと同じ気流構造を持つが、他のセルによって強制されることにより長続きする。第3の型(Lタイプ)は長寿命で、鉛直シアーの風上に傾いた上昇流を持つ。
Lタイプのセルの形成過程において、上昇流がシアーの風上側に傾くためには、上昇流の根が上昇する空気魂よりも速くシアーの風下側に移動せねばならない。その形成段階では、隣接するセルがこのような上昇流の根の速い動きを強制する。実験結果によると、このプロセスに3つのパターンがある。第1のパターンでは、一つの短寿命のセルからのアウトフローによって上昇流の根が移動する。第2のパターンでは、次々に形成する短寿命のセルのアウトフローの先端に沿って移動する。第3のパターンでは、既存のLタイプセルからのアウトフローとともに移動する。これらのプロセスを経ていったん鉛直シアー風上側に傾いた上昇流がつくられると、セルは地上付近に強い冷気プールを形成して自己維持する。
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© 社団法人 日本気象学会
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