気象集誌. 第2輯
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台風8913号で観測された幅が広く動きの遅いレインバンドと細くて動きの速いレインバンド
島津 好男
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1997 年 75 巻 1 号 p. 67-80

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抄録

レンジの長い通常レーダーと2台のドップラーレーダーによる観測から、台風8913号のレインバンドの大きさ・動き・構造を示す。これらのレインバンドは、幅が広く動きの遅いものと、細くて動きの速いものに分類される。幅の広い(50-150km)レインバンドは、角速度が10°/h以下と小さく、6-10時間もしくはそれ以上の長い寿命を持つ。細いレインバンドは、幅の広いレインバンドのやや上流かつ内側で3-4時間毎に発生し、台風中心の周りを大きな角速度(30°/h)で反時計回りに回転して、1-4時間の短い寿命のうちに幅の広いレインバンドに追いつき合体する。幅が広く動きの遅いレインバンドの内側には、1/10の傾斜で外向きに大きく傾いた擾乱(収束・上昇流・強い渦度)が解析される。細くて動きの速いレインバンドにはほぼ直立した擾乱が対応しているが、その構造は熱帯低気圧中の動きの速いレインバンドの成因として従来のいくつかの研究で提案された慣性内部重力波とは異なっている。どちらの型のレインバンドも下層に浅い対流セルが埋め込まれた層状性降水によって特徴づけられ、境界層にコールドプールを形成することはない。

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