気象集誌. 第2輯
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AVHRRデータから求めた1987年の東南極大陸上の雲の分布特性
村田 昭彦山内 恭
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1997 年 75 巻 1 号 p. 81-93

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抄録

衛星データを使ってグローバルな気候研究を進める上で、極域の正確な雲分布を求めることは焦眉の課題である。極域では地表面が雪や氷におおわれ、アルベードが高く、地表面温度が低く、単一の可視や赤外のデータから雲を検知することは大変難しいためである。本研究では、AVHRRのスプリット・ウインドウ・データを使って雲の識別を行った.11μm(チャンネル4)と12μm(チャンネル5)チャンネルの輝度温度差は薄い雲の指標として有効である。輝度温度差と輝度温度自身との相関をも使うことで、さらに厚い雲も検知可能となった。求めた雲量は、地上で測定された全天カメラによる雲量とうまく対応付けられた。こうした雲解析を、昭和基地にて受信・処理された1987年1月から1988年1月までの13ヶ月分のNOAA-9の毎日のデータについて行った。
東南極大陸上の雲の地域・時間分布特性が得られた。年平均雲量は場所によって異なり、50%から10%以下の場所まで広がり、沿岸近くで大きく内陸で小さくなった。内陸では、さらに、東向き斜面より、ウエッデル海に面した西向き斜面で雲量は多めであった。擾乱の振る舞いに関連して、多くの場所で雲量の半年周期変動が見られた。7月から9月に内陸の雲量は増加し、11月から1月にかけて多くの場所で雲量は増加した。しかし、沿岸ではあまり変動は見られなかった。解析領域は、地形の関係で3つの異なった変動特性を持つ領域に分けられた。多くの場所で、雲量の7日から15日周期振動が顕著に見られた。晴天域と曇天域の輝度温度を比較して、大気上端の雲の放射効果は、冬の内陸で負の値(冷却)、夏は全域で長波長では正の値(加熱)となった。

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© 社団法人 日本気象学会
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