抄録
人工衛星Nimbus 7号に搭載された測器Limb Infrared Monitor of the Stratosphere(LIMS)が観測したデータを用いて、下部成層圏の赤道ケルビン波とその力学的な移流効果によってトレーサー(オゾン、水蒸気)の場に誘起された擾乱の解析をおこなった。まず温度データから、1979年の4-5月を中心とする7hPa以下の領域において、ケルビン波活動にともなう東西波数1、周期12-15日の東進波成分が確認できた。背景風が約-16ms-1(50-10hPaの平均)の中を鉛直波長約15kmの波が下方に伝播している。
次に、オゾンの場からケルビン波の移流効果によって誘起された擾乱を検出した。その擾乱の振幅は東西平均したオゾン混合比の鉛直勾配が最大になる30hPa付近で大きく、またそれは温度と同じ位相構造を持っている。これらの特徴は線型理論にもとづく予想と一致する。いっぽう水蒸気の場では、下部成層圏の50hPaを中心に温度と同位相の東西波数1の東進波成分が見いだされた。ただし水蒸気においては、その空間構造はオゾンの場ほどはっきりしていない。