気象集誌. 第2輯
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75 巻, 4 号
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  • 河本 望, 塩谷 雅人, John C. Gille
    1997 年 75 巻 4 号 p. 763-773
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    人工衛星Nimbus 7号に搭載された測器Limb Infrared Monitor of the Stratosphere(LIMS)が観測したデータを用いて、下部成層圏の赤道ケルビン波とその力学的な移流効果によってトレーサー(オゾン、水蒸気)の場に誘起された擾乱の解析をおこなった。まず温度データから、1979年の4-5月を中心とする7hPa以下の領域において、ケルビン波活動にともなう東西波数1、周期12-15日の東進波成分が確認できた。背景風が約-16ms-1(50-10hPaの平均)の中を鉛直波長約15kmの波が下方に伝播している。
    次に、オゾンの場からケルビン波の移流効果によって誘起された擾乱を検出した。その擾乱の振幅は東西平均したオゾン混合比の鉛直勾配が最大になる30hPa付近で大きく、またそれは温度と同じ位相構造を持っている。これらの特徴は線型理論にもとづく予想と一致する。いっぽう水蒸気の場では、下部成層圏の50hPaを中心に温度と同位相の東西波数1の東進波成分が見いだされた。ただし水蒸気においては、その空間構造はオゾンの場ほどはっきりしていない。
  • 理論的解釈
    林 良一, D. G. Golder
    1997 年 75 巻 4 号 p. 775-797
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    低・高周波熱帯波動は、蒸発一風フィードバック(Evaporation-wind feedback, EWF)、飽和トリッガー(saturation triggering, ST)および中緯度からのトリッガー(laterl triggering)からなる連合機構(united mechanisms)により生成されると見なされる。EWFメカニズムは、ある種の波が蒸発一風フィードバックによって不安定になる。STメカニズムは、別の種類の波が飽和とともに湿潤対流の断続的開始によりトリッガーされ、すでに存在していた条件付き不安定成層を中立化させる。これらのメカニズムは、理論的には湿潤対流調節によって診断的(diagnostic)および予測的(prognostic)調節という二つの一貫した過程として説明される。この二つの過程は、対流平衡をそれぞれ再生および維持し、STおよびEWFメカニズムに決定的なものである。
    一体化された理論へのステップとしてEWF不安定を理論的ケルビン波モデルを用いることによって調べる。このモデルは線形摂動方程式において予測調節過程のみを組み込み、これによってSTメカニズムを除外する。この解は波動不安定がEWFメカニズムの結果であることを示し、波動-CISKメカニズムではないことを示す。調節パラメーターをもっともらしく選ぶと一つの強い不安定モードが観測上の40-50日振動に対応し、二つの弱い不安定モードが25-30日および10-20日振動に対応する。
    これらの結果を、元々の湿潤対流調節スキームを組み込んだ非線形モデルを用いて、第I部で扱っている数値実験からの結果と比較した。推測されることは、40-50日および25-30日モードはそれぞれ線形および非線形EWFメカニズムを通して強く発達しうるのに対し、10-20日モードはSTメカニズムを通して強く増幅しうることである。
  • Ziad S. Haddad, Eric A. Smith, Christian D. Kummerow, Toshio Iguchi, M ...
    1997 年 75 巻 4 号 p. 799-809
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    レーダーと放射計のデータを組み合わせ降雨の鉛直分布を推定する熱帯降雨観測衛星(TRMM)の打上げ時のアルゴリズムについて記述する。本アルゴリズムは、降雨レーダー(PR)とTRMMマイクロ波放射計(TMI)がそれぞれ固有に持っている不確かさを考慮して作成されている。降雨推定値に大きな偏差をもたらす可能性のある特別の仮定をもうけず、なおかつ1997年後期のTRMM衛星打上げ時に運用可能なよう簡単化を図っている。本アルゴリズムでは、レーダー反射因子を使って降雨プロファイルを推定する方法を基本としているが、その中において、レーダーデータから得られる結果が放射計から推定された善降雨減衰量と矛盾してはならないという拘束条件を課している。このデータ融合を行うために、解くべき問題を粒径分布パラメータを用いて定式化している。粒径分布パラメータの事前確率密度関数(pdf)から出発し、ベイズ法を用いて、レーダーおよび放射計の測定値に基づいて次々とpdfに条件をつけている。こうして得られたアルゴリズムは、数学的に矛盾が無く、物理的にも妥当なものである。このアルゴリズムから得られる条件付き分散を使って推定値の確度を数量化することができる。分散の大きさにより、アルゴリズムで仮定しているモデルの適切性を判断できる。
  • 第2部:雲粒付結晶の自由落下パターンと速度変動
    梶川 正弘, 奥原 京一
    1997 年 75 巻 4 号 p. 811-818
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    雲粒付の板状雪結晶について、自由落下パターンと落下速度の鉛直および水平成分の変動を立体写真法により観測した。
    不安定落下パターンは非回転、振動および回転またはらせんの3つに大別された。これらの型の差異は、結晶の雲粒付着量を考慮すると、無次元慣性モーメントと平均落下速度に関するレイノルズ数の組み合わせに依存していた。
    鉛直成分の変動の標準偏差は小さく、平均落下速度の約3%以下であった。一方、水平成分の変動の標準偏差はかなり大きかった(平均落下速度の約4~15%)。従って、ほぼ同じ形とサイズの雲粒付の板状雪結晶の不規則集合過程においては、落下速度の水平成分の変動が重要な役割をしていると考えられる。
  • Scott Curtis, Stefan Hastenrath
    1997 年 75 巻 4 号 p. 819-829
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    北半球冬期モンスーンの1月/2月を解析し、Australasia域と西太平洋における南方振動(SO)に伴う偏差を調べた。SOの位相high/coldをタヒチの高気圧偏差とダーウィンの低気圧偏差/赤道太平洋のSSTの低温偏差で定義する。1948-92年での対照的なhigh/coldとlow/warmの10年アンサンブルの合成解析をおこなった。low/warm位相の時にはhigh/coldと1992年のlow/warmの高層循環解析をおこなった。low/warm位相の時にはhigh/coldに比較して、Australasia域の低気圧は弱くなるが、正の圧力偏差の中心は幾分北に位置している。赤道太平洋は弱い東西圧力偏差で東風も弱く、これにより温かい海面水温になっている。これらが低気圧、多い雲量、対流、降雨を中部赤道太平洋において維持させ、統計的に有意な南太平洋収束帯(SPCZ)の北東へのシフト、下部対流圏の収束、上昇流、上層の発散を伴っている。200mbでの発散風は上層対流圏における広い帯状の収束帯に向かって北に吹いている。これは西部北太平洋における、下降流、下層の発散、正の圧力偏差に寄与している。
  • 谷本 陽一, 岩坂 直人, 花輪 公雄
    1997 年 75 巻 4 号 p. 831-849
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    北太平洋における海面水温場と大気循環場、風の応力場、正味の海面熱フラックス場との関係をENSOサイクルの時間スケール(3年から5年)とdecadalの時間スケール(5年以上)に分けて調べた。このために、海面水温、風の応力場、正味の熱フラックス場における緯度経度5度格子月平均値データセットを1951年から1990年の40年にわたって新規に作成した。大気循環場のデータにはNMC作成の月平均値データセットの同期間分を使用した。
    冬季の海面水温場における10年変動に対応して、大気循環場にはその活動中心域を150°W-170°W帯におくPacific/North American (PNA)とよく似たパターンが卓越する。風の応力場では、それと整合するように、中部北太平洋の海面水温が気候値より低い(高い)期間に偏西風が強く(弱く)またその中心帯は南下(北上)している。これら大気側の変化に伴い、海面での活発な(不活発な)熱放出と海洋表層でのより強い(弱い)エクマン輸送が引き起こされる。これに対し、ENSOサイクルの海面水温変動に対応する大気循環場では別のパターンのWestern Pacific(WP)に近いパターンが卓越する。ENSOのwarm epispdes時には中部北太平洋付近の海面水温は気候値より低くなり、西部北太平洋では高くなる。この際、偏西風は下流で蛇行を示し、中部北太平洋で強く偏西風の中心帯は北上し、西部北太平洋では弱まり中心帯が南下する。この風系の変化は西部太北平洋での熱放出を押さえ、この海域での正偏差をもたらす。ENSO cold episodes時にはほぼ逆の結果を示す。
    10年スケールとENSOスケールの時間スケール間における海面水温アノマリの空間構造の違いは大気大循環場における違い、つまりPNA-likeパターンとWP-likeパターンのどちらが卓越しているかに結びついている。また、それに伴う風系の変化により、海洋からの熱放出、エクマン輸送と言った水温偏差を形成する過程も時間スケール間で異なっていると考えられる。
  • HEIFE期間における解析
    板野 稔久
    1997 年 75 巻 4 号 p. 851-865
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    中国北西部の乾燥地域に位置するHEIFE領域の降水の特性について調べた。
    HEIFE領域の降雨は総観規模の擾乱によって引き起こされ、このため約200×100kmのHEIFE領域において降水はほぼ同時に観測される。しかし、観測される降雨量は標高に大きく依存し、Qilian山脈中腹の標高3000mの地点では600mm/year以上の降雨が観測される一方、標高の低い河西回廊と呼ばれる谷間の底部では100mm/year以下の降雨しか観測されない。
    大気中の水蒸気密度の鉛直プロファイルを調べてみると、夏の間には乾燥地域とはいえ少なからぬ量の水蒸気が観測され、また、安定度の点でも大きな条件付き不安定を示すことがわかった。しかし、持ち上げ凝結高度(LCL)および自由対流高度(LFC)がともに高いので、高い地表面温度によって大気が不安定化されるにもかかわらず局地的な積雲対流は見られず、結局極前線上の波動擾乱がやってきたときにだけ降水が見られる。しかし、この時多くの雨粒は地表に届く前に深くて乾燥した砂漠上の境界層内で蒸発してしまうものと思われる。このため、領域内の標高の低い地域で観測される降水量は著しく減少する。一方、冬の間は水蒸気量・安定度の両方の点において降水があまり期待できない。
  • その2:レイリー摩擦とニュートン冷却の依存性について
    加藤 輝之
    1997 年 75 巻 4 号 p. 867-884
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    レイリー摩擦(α)とニュートン冷却(c)の減衰係数が異なる値を取るとき、全球に広がる移動熱源によって励起される循環パターンを球面上の線形化された浅水方程式を用いて調べてみた。減衰係数以外にも、Lambパラメータ(惑星の自転の効果を表現するパラメータ)と熱源の移動速度を幅広く変化させて、熱源に対する応答解を求めた。浅水方程式の変数と熱源を球面調和関数で展開して得られた多元一次連立方程式を直接解くことにより応答解を求めることができる。
    熱源が高速で移動しない限り、求まった循環パターンはcではなくαに強く依存する。十分小さいαとcに対しては高度場のみ経度方向に一様な循環が現れる。さらに、αが十分大きく、cが小さい場合、高度場・発散場ともに経度方向に一様になる。ただし、このパターンは定常熱源に対しては現れない。高速移動熱源に対する応答解はcが十分大きくない限り経度方向一様になる。以上の結果から地球上の大気のようにαがcより極端に大きくも小さくない場合、α=cを仮定することは適当だと考えられる。
    αがcより相当大きい金星の下部大気にも応用してみた。力学過程の緩和時間(=1/α)が100日より短い場合、夜昼間の直接循環がcの値に関係なく現れると考えられる。
  • 高山 大, 新野 宏, 渡辺 真二, 菅谷 重平, つくば域降雨観測実験グループ
    1997 年 75 巻 4 号 p. 885-905
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1994年9月8日の午後、突風と降雹を伴う強い雷雲が群馬および埼玉県を通過した。埼玉県北西部の美里町立美里中学校では、校舎の窓ガラスが突風で割れ、教師2人と71人の生徒が負傷した。被害調査、地上観測、高層観測、静止衛星、現業レーダーなどのデータを用いて、雷雲とこれに伴う突風の解析を行った結果、この雷雲に伴って少なくとも3つのダウンバーストが発生したことがわかった。主な解析結果は以下の通りである。
    3時間以上長続きしたこの雷雲は、約8m/sのスピードで東南東進し、発達期以降はその直下で10度近くの気温低下と発散風を伴っていた。成熟期には雲頂は約15kmに達し、レーダーによる反射強度の分布は進行方向に対してオーバーハング構造を呈していた。
    被害調査による雷雲下の降雹域の幅は2ヵ所で顕著な拡がりを示した。この拡がりの見られた場所と時刻は、レーダーで観測された反射強度の核の降下の場所・時刻と一致していた。更に、数地点の地上気象観測データの時空間変換から求めた水平風の分布には、降雹域の拡がりにほぼ対応した場所・時間に明瞭な発散風(ダウンバーストAおよびC)が見られた。ダウンバーストAは、児玉環境大気測定局(KD)とそこから約3kmに位置する児玉郡市広域消防本部の中間で生じたことが、両地点の風向風速記録から明瞭に読みとれる。雷雲通過による降温はこの2地点付近で最も大きく、11度以上に達した。ダウンバーストAは最終的には差し渡し40kmの範囲にまで広がった。雷雲はダウンバーストAを生じた後、急速に衰弱した。
    KDの自記紙にはダウンバーストAとは別の更なる気温降下と風の発散が記録されており、近くでダウンバーストBが発生したことを示している。KDでダウンバーストBを発生させた雷雲の部分は、被害を引き起こした突風が吹いた時刻には約8km離れた美里中上空をちょうど通過していた。美里中付近の気象観測資料はないが、被害調査やこれらの事実から、美里中近くで第4のダウンバーストが発生した可能性が示唆される。これらのダウンバーストはすべて、ガストフロントの6-10km後方で発生した。
    雷雲周辺のCAPEは、雷雲通過前後の3時間で1800m2/s2から700m2/s2以下に減少した。相当温位の下層の極大値と中層の極小値との差も同様に、26Kから16Kに低下した。
  • 那須野 智江, 山岬 正紀
    1997 年 75 巻 4 号 p. 907-924
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    熱帯低気圧のレインバンドを構成するメソスケールの対流に対する地表摩擦の効果を調べるため、軸対称の非静力学モデルを用いて数値実験を行った。風速の回転成分が余り強くない時期(10ms-1以下)には個々のメソスケール対流の時間スケールは2~3時間であるが、回転風速が強まり地表摩擦による吹き込みが非常に強くなると、メソスケール対流の時間スケールは長くなる(Yamasaki,1983)。数値実験では11~12時間の時間スケールをもったメソスケール対流が繰り返し現れた。2~3時間の時間スケールを持つ対流とは対照的に、この長い時間スケールを持つ対流は、冷却したダウンドラフトに伴う吹き出しにより下層の収束域が外向きに遠ざけられることによっては消滅しなかった。むしろこの対流は、地表摩擦による吹き込みが強くなることによって、下層の収束域が中心向きに移動した時に消滅した。即ち、雲が外に傾くために、降水が下層の吹き込み側で起こり、暖湿な空気が雲の下層に到達するのを妨げていた。この時新しい対流が元の対流の外側に形成された。この長い時間スケールを持つ対流の構造,時間変化,メカニズムについて詳しく論ずる。
  • 内藤 陽子, 廣田 勇
    1997 年 75 巻 4 号 p. 925-937
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    赤道準2年周期振動(QBO)と太陽活動に関連した、北半球冬季成層圏循環の年々変動についての統計的解析を行なった。解析にはベルリン自由大学の主観解析データ37年分と米国気象センター(NMC)の客観解析データ31年分を用いた。QBOの位相の定義にはシンガポール(1°N)における40-50hPaの月平均東西風を、また太陽活動の指標には波長10.7cmの放射強度を用いた。
    ‘HT period’と定義した期間(1962/63-1977/78)には、Holton and Tan(1980)が示したとおり、QBO西風相(W)における極夜ジェットの風速の東西成分が東風相(E)のそれに比べて強い。しかし、データ期間の後半(1978/79-1993/94)には、その差はかなり小さくなる。太陽活動の強さによって全データ期間を‘Min’と‘Max’に分けると、MinのグループではEよりもWにおける晩冬のジェットが非常に強く、その統計的有意性も非常に高いのに対し、Maxのグループではそのような傾向は見られない。HT periodの結果がMinの結果に近いのは、彼らの解析した期間に太陽活動極小期が二回、極大期は一回含まれていたからだと考えられる。初冬には、成層圏循環は太陽活動に関係なく赤道QBOと相関しているように見える。このような初冬と晩冬の違いから、赤道QBOは初冬の中高緯度循環に影響を与え、さらにその効果が太陽活動によって晩冬に影響を受ける、ということが示唆される。
    波成分についての解析の拡張も行なった。Minの結果はHT periodの結果と同じ傾向を持ち、WとEの差はHT periodよりもはっきりしている。Maxの結果は、晩冬にはMinと逆の傾向を示す。
    最後に、成層圏突然昇温の出現が、赤道QBOおよび太陽活動の両者と有意に関係していることを示した。冬季成層圏循環、QBO、太陽活動の三者の関係は、太陽フラックスと赤道東西風の二次元位相空間に大昇温の有無を図示することにより、明瞭に表現された。
  • Brant Liebmann, Harry H. Hendon, John D. Glick
    1997 年 75 巻 4 号 p. 939-946
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    赤道太平洋上においてMadden-Julian振動(MJO)の対流活発気に雲活動の準2日変動が観測される。本論文では、その成因となりうる機構を提案する。この仮説は、以下の知見に基づいて立てられたものである。(1)MJOの中に東進する「スーパークラスター」が埋め込まれており、スーパークラスターは雲クラスターの集合体である(Nakazawa 1988)。(2)スーパークラスターからは雲活動活発域が放出されて西進する(Nakazawa 1988)。この西進する雲活動域は、スペクトル特性から準2日変動の慣性重力波と推定されている(Takayabu 1994a)。(3)MJOの活発期において、総観スケールより小さいスケールの変動は日周期を含む時間スケールで励起を受けている(Hendon and Liebmann 1994)。
    ここでは慣性重力波がスーパークラスターの雲群(envelop)中の対流活動から発生していることを前提とする。すると、スーパークラスターの東進速度の大きさが西進慣性重力波の速度の大きさに近いことから、スーパークラスターと共に東進する日周期の強制は2日周期の西進慣性重力波に射影することになる。
    本仮説の基本的な力学について、線形浅水波モデルを日変化する定在/東進質量源で強制した実験によって解説した。さらに、高解像度衛星画像を用いて仮説の検証を行なった。観測的結果は仮説の確認に十分とは言えないが、少なくとも、観測される準2日周期変動の起源の一部は、我々が提唱する機構によるものと考えられる。
  • 金久 博忠
    1997 年 75 巻 4 号 p. 947-951
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    歪んだ一般流の中のサイクロンのβ-Gyreの成長の方程式を順圧非発散の系で導いた。一般流は座標の2次関数と仮定した。サイクロンの流れは軸対称循環とβ-Gyreの流れとそれ以外の高波数成分から成るとし、高波数成分は小さいと仮定した。
    得られた方程式は次の事を示した。β効果の寄与は、βcosαに比例する。但しαは高気圧性β-Gyre中心の、サイクロン中心の回を東から反時計回りに計った方位角である。一般流の一階微分係数は変形成分を通じてのみ影響する。この寄与はλcos(2γ-2α)に比例する。但しλとγはサイクロン中心での変形行列の歪率と伸張軸の方位角である。これらの事は一様シアーの一般流で得られている結果と矛盾しない。
    一般流の二階微分係数は相対渦度の勾配を通じてのみ影響する。この寄与は|∂iΩ|sin(Θ-α)に比例する。但し∂iΩとΘはサイクロン中心での相対渦度勾配ヴェクトルとその方位角である。
    β効果はβ-Gyreと軸対称循環の間のエネルギー輸送を惹き起こすが、相対渦度勾配は、それに加えてβ-Gyreと一般流の間のエネルギー輸送も惹き起こす。
  • 1997 年 75 巻 4 号 p. 953
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
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