気象集誌. 第2輯
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初冬季の関東平野上の局地前線の気流の収支構造
吉門 洋
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1998 年 76 巻 4 号 p. 641-648

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抄録

日本海沿岸を東進する総観規模低気圧に伴って初冬季の関東平野にしばしば出現する局地前線の気流構造を、1996年12月5日に観測された例について解析した。前夜からの北部・西部の山地方面から吹く下層風が平野部に冷気を供給していた。低気圧暖域の総観規模の南風が平野南部で夜半からしだいに強まり、北部からの冷気塊との間に局地前線を形成した。
南風は前線面において下層の北風が供給する冷気を取り込み、相対的に冷たい南風の「遷移層」を形成して、冷気を運び去る。前線の北側後背部で観測した各層の厚さはかなり定常的で、下層の冷気供給量に対する遷移層内の北向き冷気輸送量の過剰分は、前線の北進に伴う前線先端部の冷気量の減少にほぼ対応する。しかし、下層の冷気流は午後まで持続し、そのため前線は平野中央部に維持される。
なお、前線の先端部の構造の一例として、前線通過前の東京都心周辺では、厚さ50mあるいはそれ以下の冷たい弱風層が2時間以上持続した点が特徴的であった。

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