気象集誌. 第2輯
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GEWEX/ISLSCPの強制力データを使った1987年から1988年の全球土壌水分量場と水循環の再現実験
Fei ChenKenneth Mitchell
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1999 年 77 巻 1B 号 p. 167-182

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抄録

GEWEX/ISLSCP全球土壌水分プロジェクト(GSWP)は全球土壌水分量場を導出し比較するため、また最終的にGCM感度実験にそれらを対応するために、個々の地表面モデルを共通の大気強制力データセットにより実行し、地表面モデルの参加を促した最初のプロジェクトである。このプロジェクトの参加者として、1987年から1988年のISLSCPの共通大気強制力データとNCEP地表面モデル(LSM)を使い、土壌水分量を含む全球の水文量場を導出した。これらの場は観測によって広範囲な大陸領域に亘って一様に得ることは困難である。計算された全球水循環はそれらの水文量の季節変動をよく反映していることがわかった。強制力場の解像度が1×1度と比較的粗いにもかかわらず、土壌水分場には著しい水平変動が見られ、それは降水の水平パターンのみならず、流出や蒸発量の水平パターンにも関連している。また、植生や土壌特性の水平変動が地表面水循環の変動に寄与している。
計算された全球地表面水循環とNCEP/NCAR再解析地表面データとの比較も行った。ほとんどの領域で再解析の土壌水分量はGSWPの土壌水分量よりも大きな年変化振幅を持つようだ。さらにもっと著しい違いは、北半球中高緯度で再解析の土壌水分量は同地点のGSWP土壌水分量に比べてより非一様であり、より湿っていることである。これは再解析システムに使われている気候的土壌水分の人工的なダンピング場に起因している。
最後にイリノイ土壌水分ネットワーク(Illinois Soil Moisture Network)で測定された土壌水分量を用いて、計算された土壌水分量の検証を行った。ここでは平均深層根系層の土壌水分量の比較に焦点を絞った。1987年から1988年を対象に計算されたイリノイ州での土壌水分量は、季節発展の位相ばかりでなく、年変動の振幅もよく捕えている。この結果は、正確な大気強制力と論理的に正しい局地植生分布と土壌特性が与えられたならば、LSMは自然の土壌水分量の発展を良く計算することができることを示している。

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