抄録
雲とエアロゾルの地表面短波放射強制力の年間値を見積もるために、館野における精度のよい短波放射観測値、ラジオゾンデ観測値およびスカイラジオメター観測によるエアロゾルの光学的特性値を用いて高精度放射伝達計算を行なった。
晴天フラックスは、ラジオゾンデ観測による温度湿度プロファイルを用いた純粋なレイリー散乱大気についての計算により定義した。水蒸気と温度プロファイルによる晴天フラックスの月変化は10-30Wm-2であった。雲とエアロゾルによる地表面短波放射強制力はフラックス観測値と晴天フラックスとの差によって定義した。1996年の年間平均値は-81Wm-2であり、大気上端の太陽入射の約24%に当たる。一方、エアロゾル強制は、スカイラジオメター観測によるエアロゾルの光学的厚さを用いた大気フラックスの計算値と晴天フラックスとの差によって求めた。3-4月を除く年間平均値は-18Wm-2で、6%にあたる。
エアロゾルに含まれる煤の割合に対する感度実験の結果、1月、2月、7月は10%、10-12月は20%、5月、6月、8月は5%、9月は0%の煤の割合が推定された。この値は、これまでに観測されている煤の割合や都市分布と風向の関係と概ね一致する。
ただし、スカイラジオメターから求めたエアロゾルの粒径分布を計算に用いると、特に大気水蒸気量の多い夏期において推定値の誤差が拡大した。スカイラジオメター観測データを用いたエアロゾル粒径分布の推定手法について、今後の詳細な検討の必要性が示唆される。