気象集誌. 第2輯
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金星大気のスーパーローテーションに関するトンプソン・メカニズムの解釈と、その球面上への拡張
高木 征弘松田 佳久
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1999 年 77 巻 5 号 p. 971-983

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抄録

先ず、二次元面内でのThompsonメカニズムを再検討した。少数のモードによる考察により「傾いた対流がシアにより更に傾く」という力学過程における正のフィードバックが存在しないことを示した。更に、平均流を生成する不安定が傾いた対流と傾いた温度場の間の相互作用によって生じることを示し、高解像度のモデルを用いてそれを検証した。この結果からThompson(1970)の数値実験で示された不安定は、力学場と温度場の相互作用により生じると考えられる。
次に、球面上におけるThompsonメカニズムの有効性-三次元的な夜昼間対流の不安定により平均流が生成されるのか-を調べるための数値モデルを作成した。惑星の自転がない場合、定常解は夜側と昼側の間の軸対称な夜昼間対流となる。いろいろな条件の下で定常解を求めその安定性を調べた所、それらは安定であり、平均流を生成するような不安定モードが存在しないことが示された。この結果はThompsonメカニズムが二次元面内の対流でのみ働き、球面上の対流ではうまく働かないことを示唆している。

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