1999 年 77 巻 6 号 p. 1299-1307
硫酸エアロゾルによる散乱を陽に表現した大気海洋結合モデルを用いて、温室効果気体と硫酸エアロゾルの増加に対するモデルの応答を調べた。比較のため、過去の研究と同じ方法、パラメータ値を使って、地表アルベドの変化によりエアロゾルの散乱を表現する実験も行なった。エアロゾルの間接効果は組み込まれていない。過去の放射計算によって指摘されていたように、硫酸エアロゾルの直接効果による放射強制は、硫酸エアロゾルによる散乱を陽に表現した場合では地表アルベドで表現した場合に比べて著しく小さく見積もられた。地表アルベドによる方法が過大評価となる主要な原因の一つは、エアロゾルによる散乱の地表付近の湿度に対する依存性を無視していることである。硫酸エアロゾルの効果による地表気温の変化は、硫酸エアロゾルによる散乱を陽に表現した場合では、地表アルベドで表現した場合に比べて特に乾燥域で小さく見積もられた。また、硫酸エアロゾルの効果による夏のアジアモンスーンの降水量の変化が、硫酸エアロゾルによる散乱効果の取扱いに特に敏感であることが示唆された。