気象集誌. 第2輯
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大気大循環モデルでシミュレートされた北極振動の解析
山崎 孝治新家 康裕
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1999 年 77 巻 6 号 p. 1287-1298

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抄録

中高緯度北半球における大気循環の環状の変動モードは、地表付近から下部成層圏まで等価順圧的な構造をしている。このモードは、Thompson and Wallace(1998)により北極振動(Arctic Oscillation; AO)と名づけられた。北極振動は海面気圧場の経験的直交関数(EOF)第1モードで定義され、一年中見られるが冬季により卓越する。また、北極振動は極域と中緯度域帯との質量のシーソーパターンにより特徴づけられ、帯状平均風についても40°Nを境に極側と赤道側で同様のシーソーが見られる。
ここでは、北極振動が大気の内部モードであることを確認し、また北極振動が高指数/低指数へ遷移するメカニズムを調べるため、シミュレートされた北極振動について解析する。CCSR/NIES AGCMを使用し、季節ランおよび2月固定ランどちらのシミュレーションにおいても北極振動が卓越し、振幅も観測と同程度となった。このことから北極振動が大気の内部モードであることが確かめられた。
2月固定ランの出力を用いて北極振動が高指数/低指数へ遷移する際のコンポジット解析をおこなった。帯状平均風に関する変形オイラー平均方程式系に基づき、どの項が遷移に関与しているか調べた。この結果、波の強制力が遷移に寄与していること、残差子午面循環が遷移をもとに戻すように働いていることが示された。また、波の強制力を各波数ごとに分解した結果から波数2と3の惑星規模の波が遷移に寄与していることが示された。総観規模の波は低緯度側の風の変動にある程度寄与している。
北極振動と関連した4~6ヵ月周期でゆっくり伝播する成層圏-対流圏結合モードが2月固定ランで見られた。帯状平均東西風の偏差は、最初に亜熱帯成層圏に現れ、ゆっくりと極方向へ伝播し、高緯度に達すると、急速に偏差が大きくなり、対流圏に伝播する。

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