気象集誌. 第2輯
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対流雲と層雲の判別に基づくTRMMマイクロ波放射計降雨強度推定法
C. PrabhakaraR. Iacovazzi Jr.J. A. WeinmanG. Dalu
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2000 年 78 巻 3 号 p. 241-258

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抄録

熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載されているマイクロ波放射計(TMI)の85GHz輝度温度は、メソスケール対流システムを含む領域で頭著な極小値を示す。それは、約5.5kmという高い空間分解能と85GHzチャンネルの強い消散特性によるものである。TRMMに搭載されている降雨レーダーによる同時観測によって得られた地表降雨強度マップから、この85GHz輝度温度の極小値は、強い散乱特性を持つ降雨強度が最大の部分に対応することが示された。このように降雨レーダーで得られる降雨強度マップを用いれば、経験的にTMIデータから三つの異なる種類の雷雲あるいは積乱雲の存在を推定できる。これらの積乱雲は発達期、最盛期、減衰期に分けられ、平均20km程度の大きさであると考えられる。これら三つの積乱雲を区別するために、二つのパラメーターが用いられる。すなわち、a)散乱による85GHz輝度温度の低下、およびb)極小値の周りの85GHz輝度温度の平均的な傾きである。どのような種類の積乱雲であるかということが分かれば、それに関連づけて降雨強度を推定することができる。その推定は、それぞれの積乱雲の種類ごとの降雨強度と85GHz輝度温度極小値の関係から求められる。同様に、85GHz輝度温度が260K以下の弱いバックグラウンド的な降雨強度は、また別の関係を用いて推定される。我々の降雨推定モデルにおいては、このバックグラウンド降雨は積乱雲が存在しない層状雲からの雨に対応している。これらの関係はいくつかのメソスケール対流システム現象に対する降雨レーダーとTMIのデータから最適化される。そして、この降雨推定モデルが個々のメソスケール対流システムに適用され、弱い雨(1-10mmhr-1)、中程度の雨(10-20mmhr-1、強い雨(>20mmhr-1の降雨強度の面積分布が推定される。それぞれの降雨強度の面積とそれぞれの領域での降雨強度の推定精度は平均約15%である。本研究の方法を用いることにより、熱帯においてTMIの走査幅720kmで大気中に放出される潜熱を求めることが可能になる。

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© 社団法人 日本気象学会
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