気象集誌. 第2輯
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COLA大気大循環モデルで再現されたインド夏季モンスーンに対する積雲パラメタリゼーションの効果
D. R. PattanaikV. Satyan
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2000 年 78 巻 6 号 p. 701-717

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抄録

インド夏季モンスーンの積雲対流パラメタリゼーションに対する感度を、COLA大気大循環モデルを用いて調べた。観測された海面水温を与えて、KuoとRelaxed Arakawa-Schubert(RAS)の2つの積雲対流方式を用いてそれぞれ9年間のシミュレーションを行った。力学場として風や速度ポテンシャルなどの場をNCEPの再解析値と比較した。また、降水は対応する観測と比較した。
9年間の季節シミュレーションの結果は、2つの積雲対流方式の違いが、インド夏季モンスーン循環とその降水に大きなインパクトを持っていることを示した。大規模場の特徴はKuo方式に比べてRAS方式の方がより良く再現される。RAS方式はKuo方式に比べて、アラビア海上の下層の西風を強め、そこからインド中央部への水蒸気輸送を増す。ベンガル湾とアラビア海領域上の対流加熱は地上付近と上部対流圏を除いてRAS方式の方が大きい。そのRAS方式の場合、上部対流圏の対流加熱の極大値はベンガル湾の方が、アラビア海よりも大きい。RAS方式に比べて、Kuo方式では、チベット高気圧は弱く、東にシフトし、上層の熱帯東風ジェットも弱い。同様に、モンスーン循環の一部としての上部対流圏の発散外出流もKuo方式の方が明らかに弱い。両方式ともインドのモンスーンの降水について観測に非常に近い再現はできないが、ベンガル湾上や西海岸上の降水の極大はRAS方式の方がより良く再現する。これらの違いが2つの積雲パラメタリゼーションのクロージャーとフィードバックの違いに関連付けられる。また、シミュレートされた降水の時系列は、モンスーンの季節内変動の位相が季節進行に対して固定されている様子を示している。

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