気象集誌. 第2輯
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1997/98エル・ニーニョに関係したインド洋上の東西非対称偏差の誘発過程
植田 宏昭松本 淳
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2000 年 78 巻 6 号 p. 803-818

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抄録

1997年10月から12月にかけて赤道インド洋上の海面水温(SST)と対流活動に見られた顕著な東西非対称偏差の発生過程と強化メカニズムについて、NCEP/NCAR再解析データおよびTOPEX/POSEIDONから得られた海面高度データを用いて調べた。
赤道インド洋上の卓越風向は東西で異なり、夏の西インド洋上では西風が卓越するのに対し、同時期の東インド洋上では東風が顕著である。1997年の夏はエル・ニーニョに伴う発散風の東風偏差が赤道インド洋上に出現し、気候学的な西インド洋の西風を弱める一方、東インド洋での東風を加速し、蒸発冷却と湧昇の変調を通して、引き続く秋に西高東低のSSTコントラストが生み出された。そのため1997年の10月から12月にかけて、対流活動は赤道インド洋上の西側で活発化していたが、東側では強く抑制されており、赤道インド洋全域では、通常卓越する西風に代わって顕著な東風が出現した。
この東風は西向きの暖水ロスビー波を引き起こし、赤道西インド洋で1998年1月に見られたSSTの最大正偏差をもたらし、東西コントラストを強化したと考えられる。また東インド洋で1998年2月から6月にかけて生じたSSTの上昇は、東風偏差の終焉によって引き起こされた東向きの暖水ケルビン波の到着と一致している。
このように、エル・ニーニョに伴う変調されたWalker循環と夏から秋にかけてのモンスーン循環との結合過程は、東西非対称偏差の出現において重要であり、海洋波動は非対称構造の強化と密接に結びついていることが明らかとなった。

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