言葉 (言語) と人間の思考方法は密接にからみあっている。言葉は文化を映し出す鏡と言ってもよい。この小論は、言葉・文化の違い、すなわち人間の思考方法の違いが内観のプロセスに影響を与えてしかるべきではないか、という前提に立つ。日本語を母語とする人間の思考方法は、日本語の背景にある価値観によって規定されている。また、日本で生まれた内観という方法論にも、日本文化を醸成してきた価値観が確実に織り込まれているであろう。まずは英語との対照によって日本語の特徴を描き出す。次に、内観による心の動きが言葉づかいの変化に反映される点に注目し、その文脈の中で、極めて日本 (語) 的な表現であると思われる「させていただく」を取り上げる。そこに見えてくる価値観と内観との関係を考察していく。この試みが、内観に含まれている「日本文化の特殊性」、そして「普遍性」についての議論を深めるために寄与できることを期待する。