2005 年 11 巻 1 号 p. 61-69
内観では精神分析のような直接的な一対一の関係性は生じない。しかし、内観でも抵抗・防衛との兼ね合いで内観者面接者「間」には相当強い相互関係が存在する。その相互性はあくまで内観三項目の「遂行の仕方」をめぐって展開する。「相手の立場に立って」内観をしているか、または面接をしているかが問われ、「期待に添えなかったこと」を迷惑と勘違いしていないか、面接者に内観を「演じて見せていないか」等をめぐり内観者面接者「関係」の相互性は展開していく。内観三項目の「遂行の仕方」をめぐる内観者面接者「関係」の相互性が十分理解できないと、内観の罪意識の治療的ダイナミズムが把握できなくなり、ひいてはそれは内観三項目の理解にも支障をきたしてくる。内観者面接者「関係」の相互性を理解し、内観体験における罪意識の力動を知ることは、内観三項目の役割を理解する上でも、他の精神療法との対話を促進するためにも不可欠である。