本稿は仏教の縁起の思想を通して吉本内観法に新しい角度から光を当てようとする試みである。
1 仏教における縁起の概念とその歴史的展開を述べる。原始仏教、龍樹の思想をへて華厳思想における重々無尽の縁起について説明する。
2 集中内観によって多くの内観者は「重々無尽の縁起」に似た感覚を体得する。これを「縁起感覚」と規定し、「受動的」「中立的」「能動的」の三つの側面に分けて考察する。
3 内観の構造そのものが縁起的であることを示し、母親に対する自分を最初に調べる意味を考察する。
4 内観者に生ずる「縁起感覚」の能動的側面について、文化人類学の「互酬性」の概念により説明を試みる。