内観研究
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論点
「迷惑をかけたこと」の今日的解釈
本山 陽一
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2007 年 13 巻 1 号 p. 59-70

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抄録

 内観を外部から見ると、内観三項目の中の「迷惑をかけたこと」が、自己抑制的になり自分の考えや気持ちを表現できなくなるのではないか、あるいは、道徳的な響きを感じる、といったふうな誤解を与える場合もあるようである。そこで、内観三項目がいかに精神の認識力を成長させるか、その構造について考察するとともに、とりわけ「迷惑をかけたこと」を調べる有用性を精神分析学者のエーリッヒ・フロムの「成熟すると両親から自由になり、自分自身の中に母性原理と父性原理を作り上げる。子どもは自分自身の父親になり、母親となる」という理論を借りて説明を試みた。内観をすることが、どうして内部に母性原理と父性原理を作り上げることが出来るのかを考察し、内観における「罪悪感」をその過程と構造を従来の罪悪感と比較しながら考察することによって「迷惑をかけたこと」の今日的解釈を導き、東洋思想から生まれた内観を西洋思想の言葉に置き換えようとするものである。

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© 2007 日本内観学会
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