本論の目的は心の成長を抱える枠構造という観点から、私設相談室が内観研修所と連携することで実現した治療促進過程について論じることである。私設相談室が家族内観を導入する判断基準としては ①クライエントの行動をコントロールする能力が著しく低下している。②問題解決に期限がある。③治療対象がクライエント個人だけではない。④クライエントが抱える不安が非常に大きく私設相談室の枠構造に収まらないと思われる。などが挙げられる。私設相談室は、枠構造を拡大させることを意図して家族内観を提案した。枠構造を拡大させることで、治療者がより守られた。守られることは、治療者がクライエントの変容のための容器となる努力のために必要なことであった。一方で、クライエントは、自ら枠構造の選択を行っており、さらには枠構造を拡大させていた。