2001 年 7 巻 1 号 p. 47-52
集中内観を導入した解離性障害の女子大学生の症例を報告する。主要な症状は上下肢の粗大な振戦であり、歩こうとすると増悪した。情緒が不安定で、過呼吸発作を起こしたり時にはけいれん発作や失神を引き起こした。発病二ヵ月後から入院治療を開始したが、退行状態を呈すなど治療の進展が見られなかった。面談において、高校三年生の時に死別した母親に対する恨みの感情が解消されていないことが判明した。そこで、ある程度症状が改善した入院三ヵ月目の時点で、母親に対する喪の仕事の達成を目的に集中内観を導入した。集中内観によって彼女は、死に直面した母の気持ちに気付き、母親から十分愛された事実に気付き、この世に残されたという恨みの感情を解消することができた。結果として解離症状は消失した。本症例の治療経験から、喪の仕事が主要なテーマとなる症例には、集中内観を導入する価値があると考えた。