本研究では,東日本大震災において学校の緊急対応にあたった岩手・宮城・福島県の小・中学校31校の校長による体験談を収集して,その行動内容を緊急時の意思決定モデルである「OODA ループ」 の 4 つの段階(「観察」「判断」「決定」「行動」)ごとに分類・整理した。その結果, OODA ループが順調に回転しない(意思決定により多くの時間がかかる)ことに影響を与えた要因として, 1 .「観察」の段階では,停電の影響により情報を収集できない,校長・教職員が主体的に情報を収集しない, 2 .「判断」の段階では,発災直後に情報収集をしていないために “実際”(今後の見通し)を把握できない,マニュアル・訓練に不備があるなど“計画”(事前の想 定)が十分ではない, 3 .「決定」の段階では,行動選択肢が思い浮かばない,選択可能な行動 選択肢が限られる,一度選択した行動を変更しない(あるいは,変更できない),無意識に「何もしない」という行動を選択し続ける, 4 .「行動」の段階では,特定の行動にかかりきりになる, 行動が二転三転する,を挙げることができた。