自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
Print ISSN : 0286-6021
報告
OODAループの観点から見た緊急対応時の校長の意思決定に影響を与える要因-東日本大震災での岩手・宮城・福島県の小・中学校の事例研究-
藤本 一雄
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 36 巻 4 号 p. 399-408

詳細
抄録

本研究では,東日本大震災において学校の緊急対応にあたった岩手・宮城・福島県の小・中学校31校の校長による体験談を収集して,その行動内容を緊急時の意思決定モデルである「OODA ループ」 の 4 つの段階(「観察」「判断」「決定」「行動」)ごとに分類・整理した。その結果, OODA ループが順調に回転しない(意思決定により多くの時間がかかる)ことに影響を与えた要因として, 1 .「観察」の段階では,停電の影響により情報を収集できない,校長・教職員が主体的に情報を収集しない, 2 .「判断」の段階では,発災直後に情報収集をしていないために “実際”(今後の見通し)を把握できない,マニュアル・訓練に不備があるなど“計画”(事前の想 定)が十分ではない, 3 .「決定」の段階では,行動選択肢が思い浮かばない,選択可能な行動 選択肢が限られる,一度選択した行動を変更しない(あるいは,変更できない),無意識に「何もしない」という行動を選択し続ける, 4 .「行動」の段階では,特定の行動にかかりきりになる, 行動が二転三転する,を挙げることができた。

著者関連情報
© 2018 日本自然災害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top