自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
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巻頭言
報告
  • 佐藤 史弥, 秦 康範, 吉本 充宏, 本多 亮
    2023 年 42 巻 3 号 p. 187-196
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,富士山噴火に対する富士山麓住民のリスク認知と火山現象に対する理解の特徴を明示することである。そのために,富士山麓地域の住民へアンケート調査を行った。その結果,以下の3点の知見が得られた。1 .富士山麓の住民が考える次の富士山噴火の災害の規模感は,広範囲に降灰被害をもたらした宝永噴火と同程度のものであったこと。2 .住民の4 ~ 6割が,自宅の火山災害リスクを正しく認知できていないこと。3 .住民にとって富士山噴火で起こりうる多様な火山現象を的確に理解できていないこと。
  • -名取市閖上7丁目ならびに気仙沼湾岸地域を事例として-
    榎本 祐嗣, 山辺 典昭, 杉浦 繁貴, 近藤 斎
    2023 年 42 巻 3 号 p. 197-212
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー
    2011東北沖地震発生から数十分たって,三陸沿岸各地を黒い津波が襲い,火災が発生,甚大な火災害にいたった。この火災害に関して,さまざまな調査研究が報告されたものの,津波火災の発生の根本的原因については不分明なままである。そこで本研究は名取市閖上7 丁目および気仙沼市鹿折地区で起きた津波火災の原因解明に資する証言・記録や映像などの情報の時系列を整理し検討を行った。そして,1993年に起きた北海道南西沖地震における奥尻島青苗地区で起きた津波火災の我々の調査研究も参考にしつつ,次のようなプロセスを提唱した。 ① 沖合海底に堆積するヘドロを巻き込んだ黒い津波がそのヘドロの中で生成されたメタンをも巻きあげ,メタンを含む白い泡が津波風にのって陸に運ばれた。 ② メタン泡は岸壁などに衝突・立ち昇った帯電ミストによる静電気エネルギーによってメタンを着火させた。もしくは ③ 海面に浮かぶ凝集したガレキの下や隙間にメタン泡が滞留し,帯電列の異なるガレキ同士の衝突摩擦によって静電気着火させた。 ④ ①もしくは②のプロセスのため名取市閖上7 丁目や気仙沼鹿折地区などの市街地にある他の可燃物に引火して火災が拡がった。
  • -防犯ビデオによる浸水位・流向流速の変化-
    伊藤 和也, 三上 貴仁, 田中 剛, 末政 直晃
    2023 年 42 巻 3 号 p. 213-224
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー
    令和元年東日本台風による浸水で筆者らの大学の多くの施設が浸水し被災した。この浸水被害は排水樋管の運用ルール等は内水氾濫の被害を受けた多摩川周辺地域と同じであるが,それに加えて操作不能となった樋管の存在によって複雑化した。筆者らは被災直後に浸水調査を行っており周辺地域の内水氾濫による浸水被害は把握できた。しかし浸水過程については断片的な情報しか得られていなかった。そこで本研究では,当該地域に設置されていた複数の防犯カメラ映像を用いて,浸水位の時間変化に加えて,流向・流速を計測し,内水氾濫時の当該地域の浸水の特徴等の把握を行った。得られた結果を踏まえて,浸水被害を受けた大学と地域住民とのつながりや大学の地域防災拠点としての在り方などについて考察した。
論文
  • 遠藤 優人, 山田 孝
    2023 年 42 巻 3 号 p. 225-238
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー
    2018年の北海道胆振東部地震により厚真町で発生した斜面崩壊による家屋被災において,滑 動型表層崩壊によるものはその約7割を占める。そこで,滑動型表層崩壊の発生場,崩土の流 下・氾濫・堆積場の地形をArcGIS によって解析した。また,行政機関や報道機関などが撮影 した家屋被災写真を収集し,家屋被災の程度を把握した。滑動型表層崩壊により被災した家屋 の約9 割が「流失・埋没」である。犠牲者の全てはこの被災形態を呈する家屋で発生した。さら に,現地での崩壊滑落崖での堆積層構造と土質試験から崩土の平均的な密度や滑動深を推定し, 運動モデルを作成して崩土の速度,運動エネルギーを算定した。家屋の「流失・埋没」をもたら した崩土の運動エネルギーは,約313 kN/s 上と推定される。
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