自然災害科学
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報告
平成30年7月豪雨災害による人的被害の特徴
牛山 素行本間 基寛横幕 早季杉村 晃一
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2019 年 38 巻 1 号 p. 29-54

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抄録
筆頭著者は近年の日本の風水害による死者・行方不明者(以下「犠牲者」)に関するデータベースを構築しており,これまでに1999~2017年の1011人について分類している(以下「1999-2017」)。 本報告では,平成30(2018)年7月豪雨による犠牲者(以下「2018豪雨)と1999-2017の特徴を比較することを目的とする。2018豪雨では,西日本一帯で犠牲者231人が生じた。2018豪雨による犠牲者の特徴としては以下が挙げられる。 1)犠牲者数は1982年7月以降の風水害としては最多となった。 2)犠牲者の54%は土砂災害によるもの,35%は洪水によるものだった。 3)犠牲者の61%は屋内で発生した。 4)犠牲者の12%は何らかの避難行動をとっていた。 5)土砂災害による犠牲者の92%は土砂災害危険箇所付近で発生した。屋内での犠牲者率は,1999-2017より高かった。特に,岡山県倉敷市では,浸水した屋内で多くの犠牲者が生じた。同地で見られたような,3m以上の深い浸水の発生は,多くの洪水犠牲者の発生につながりうることが示唆された。避難行動ありの犠牲者率は,1999-2017と整合的だった。避難開始タイミングの重要性があらためて示唆された。土砂災害危険箇所付近での犠牲者率は,1999-2017と整合的だった。犠牲者軽減にはハザードマップ的情報が重要であることがあらためて示された。
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© 2019 日本自然災害学会
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