2023 年 42 巻 3 号 p. 225-238
2018年の北海道胆振東部地震により厚真町で発生した斜面崩壊による家屋被災において,滑 動型表層崩壊によるものはその約7割を占める。そこで,滑動型表層崩壊の発生場,崩土の流 下・氾濫・堆積場の地形をArcGIS によって解析した。また,行政機関や報道機関などが撮影 した家屋被災写真を収集し,家屋被災の程度を把握した。滑動型表層崩壊により被災した家屋 の約9 割が「流失・埋没」である。犠牲者の全てはこの被災形態を呈する家屋で発生した。さら に,現地での崩壊滑落崖での堆積層構造と土質試験から崩土の平均的な密度や滑動深を推定し, 運動モデルを作成して崩土の速度,運動エネルギーを算定した。家屋の「流失・埋没」をもたら した崩土の運動エネルギーは,約313 kN/s 上と推定される。