抄録
東日本大震災の被災地を中心に,被災や災害対応に関する体験を聞く語り部学習が盛んに実施されている。一方で,それを聞いた人の継続的な影響・効果は定量的には把握されていない。本稿では,被災体験の語りを聞くという震災語り部学習において,その聞き手に及ぼした変化・効果を1,247名の小学生から高校生を対象にしたオンライン語り部学習を事例に検証を行った。学習直後のみならず,「その後」を観察することで継続的な影響の有無・程度についても評価を行った。その結果,災害を生きる力を重要視する意識変化が1 ヶ月以上維持されていたこと,語り部から聞いた話を家族に話した聞き手が6 割以上いたことが明らかとなった。語り部の話を聞いた後の行動変容には,語り部の話に対する没入や新たな知識獲得が重要であることなどが明らかとなった。