抄録
本研究は,2024年1月1日に発生した能登半島地震の発生初期における災害ボランティアに関するX(旧Twitter)上の言説を分析したものである。地震発生直後のボランティア関連の言説の性質を明らかにし,過去の災害との比較,被災地内外の言説の差異を明らかにすることを目的とする。分析の結果,ボランティアとともに共起した語には「迷惑」「渋滞」「道路」に加えて「寄付」や「情報」といった語もあった。これらは直接的な関与よりも間接的な支援を重視していることを示唆していた。2020年7 月豪雨災害の投稿と比較すると,能登半島地震ではボランティアに対する肯定的な評価が著しく低かった。これは,現地でのボランティア活動やそれに関連する報告が少なかったことに起因していると考えられる。被災地内からの投稿はボランティアへの感謝の気持ちを反映した肯定的なものであったが,被災地外からの投稿はボランティアに対して否定的な意見が多かった。これらの言説は,現場の声を抑圧することで,当事者不在のまま展開されている可能性が示唆された。