抄録
本稿は,主に予測可能な洪水に対する発災前の事前移転移転に関して,移転元地の都市や地
域の変容というよりも,災害リスクの解消を含む,移転当事者個人やコミュニティとしての生
活の変容という視点から,参加型で集団で行う移転(さらにはそれらをマスな政策で実施する
こと)の包括的な価値について,一部日本と比較しながらフィリピン・メトロマニラの政策の
仕組みやその結果について考察するものである。行政ではなく移転者集団である既存の地域コ
ミュニティが事業主体となり,移転地選定や住宅デザインを行うことで,災害リスクがより低
減され,ソーシャル・キャピタルは保持され,都市施設や交通へのアクセス性は向上し,住空
間は多様化し,同時に進行するプロジェクトどうしで人々は学び合う。移転を希望する多くの
人々が,主体的・集団的に時間をかけながら移転計画を実行できるトップダウンの政策として
のボトムアップの仕組みの構築が求められている。