【目的】血管内治療は一般的に低侵襲で感染合併症が少ないと思われており,異物感染の報告があるにもかかわらず脳血管内治療の分野における研究を見ない.今回,脳血管内治療の菌血症合併の現状について検討した.【方法】2006年9月から2007年9月までの脳血管内治療153手技において,培養,血清検査を行い,菌血症の発生率,術野の清潔度,危険因子について分析した.【結果】12例(7.8%)で菌血症が認められ全例抗生剤投与により軽快したが,MRSAによるものは難治性であった.過半数の症例の術野から皮膚常在菌が検出された.菌血症の危険因子として術式(腫瘍塞栓術odds ratio[OR]7.6, P=0.034),大きなシースサイズ(OR 3.9, P=0.047) の関連が有意であった.術野清潔度では,特定の術者(助手) (OR 0.5, P=0.049)の関連が有意であった.予防抗生剤投与例でも感染が有意に認められたため (OR 4.7, P=0.035) ,抗生剤は種類,投与期間が重要であると考えられた.【結語】脳血管内治療において予想以上に高率の菌血症が認められ,易感染者やシースサイズの大きい複雑な手技には特に清潔操作に注意を要する.