抄録
【目的】摘出術前の直接穿刺による腫瘍塞栓術中に外頸動脈へのNBCA(nbutyl2cyanoacrylate)のmigrationを認めた頚動脈小体腫瘍の1例を報告する.【症例】42歳,女性.徐々に増大し,圧痛を伴う左頚部腫瘤を自覚.頚動脈小体腫瘍と診断し,摘出術に先行して腫瘍塞栓術を行った.経皮的に腫瘍を直接穿刺しロードマップガイド下に20%NBCAによる塞栓術を行い,完全な腫瘍濃染の消失を認めた.塞栓術終了直前にNBCAが外頚動脈の分枝に逆流し,外頚動脈分枝閉塞をきたしたが,症状は出現しなかった.塞栓術翌日に腫瘍摘出術が施行され,約200mlと少ない出血量で全摘出が行われた.【結論】NBCAを用いた直接穿刺による塞栓術は頚動脈小体腫瘍の術前塞栓術として有用であると思われる.しかし,周辺血管への塞栓物質迷入に充分な注意が必要である.