2011 年 5 巻 1 号 p. 36-42
【目的】耳鳴および舌下神経麻痺で発症したanterior condylar confluent(ACC)のdural arteriovenous fistula(AVF)を報告する.【症例】57歳男性.右側ACCのdural AVFに対して,初回治療では舌下神経管内の静脈の塞栓によって舌下神経麻痺を改善できない可能性を危惧して経動脈的塞栓術を行い右舌下神経麻痺の改善がみられた.ところが,1年後,流出路の変化により,右視力障害,眼球結膜充血などの眼症状が出現したため,経静脈的塞栓術を行い完治できた.この治療の際,患側からのアプローチではなく,反対側の下錐体静脈洞からintercavernous sinusを介して患側の海綿静脈洞から右下錐体静脈洞へ入り,塞栓術を行った.本法により,カテーテルが安定し,かつ,適切な量のコイルで塞栓を行うことができた.【結論】比較的稀な臨床経過をたどったが,状況に合わせた戦略によって最終的に根治が得られた.経静脈的塞栓術の際,対側からのはアプローチは有用であった.