抄録
要旨:【目的】後下小脳動脈に限局した解離性動脈瘤は稀であり,両側性病変の報告はこれまでにない.くも膜下出血で発症し,両側後下小脳動脈に解離を認めた症例を経験したので報告する.【症例】後頚部痛と眩暈で救急受診した41 歳男性.意識清明,CT 上Fisher grade 3 のくも膜下出血を認めた.両側後下小脳動脈のanterior medullary segment からlateral medullary segment 近位に解離性動脈瘤を認めた.出血側が不明のため保存的治療を行っていたところ,Day 9の検査で右側病変の増大を認めた.Day 17 右後下小脳動脈起始部を含めた右椎骨動脈のバルン閉塞試験を行い,症状出現がないことを確かめたうえで,Day 24 に右側病変の母動脈閉塞を行ったところ,術後に小脳および脳幹梗塞を生じた.リハビリテーションにより症状は改善し,左側病変は半年後の検査で自然縮小を認めた.【結論】両側後下小脳動脈解離性動脈瘤は極めて稀である.母動脈閉塞による血管内治療では慎重な術前評価が必要である.