The Journal of Nursing Investigation
Online ISSN : 2434-2238
Print ISSN : 1348-3722
16-1, 2
母親のヘルスリテラシーを測定している尺度と関連要因に関する文献検討
多田 美由貴岩本 里織岡久 玲子松下 恭子
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2019 年 16 巻 1-2 号 p. 1-9

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抄録

抄 録 目的:近年,健康や医療に関する情報を入手,理解,評価,活用して健康に結びつく意思決定ができる力であるヘルスリテラシーが健康を決める力として注目されている.本研究では,母親の育児に関するヘルスリテラシーを把握できる尺度の必要性を検討するため,国内外で母親のヘルスリテラシーを測定している尺度について,その特徴と関連する要因について明らかにすることにした.方法:2018年10月にPubMed,医学中央雑誌の2データベースを使用し,MeSH Termsを用いて1990年から2018年の母親のヘルスリテラシーに焦点をあてた文献を検索した.結果:16件の英語文献が抽出された.米国における研究が14件で最も多く,日本人を対象とした研究はなかった.多く用いられていた測定尺度は,母親を対象に開発された尺度ではなく,広く成人を対象に用いられている尺度であり,基本的な識字能力をみる機能的リテラシーを測定する尺度であった.母親のヘルスリテラシーの関連要因として,母親の年齢や教育,社会経済的状態など先行研究と同様の結果と子どもへの薬の投薬方法,子どもの睡眠状況や疾患の症状,重症度など子どもの健康に関連する特徴的な結果が得られた.考察:本研究の結果,母親のヘルスリテラシーを高めることの必要性が示唆された.しかし,母親のヘルスリテラシーを測定していた尺度は,元々それを測定するために開発されたものではなく,どのような対象でも汎用性がある尺度であった.そこで,一定の社会保障が確保され,識字率が高い日本の母親を対象とした信頼性と妥当性のあるヘルスリテラシー測定尺度の開発が必要である.また,今後は健康や医療に関する情報はもちろん,子どもとのつながりを重視した育児に焦点をあてた母親の育児に関するヘルスリテラシーを適切に把握できる尺度の開発が必要であると考える.

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© 2019 国立大学法人 徳島大学医学部
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